2022.2.2

1月に観たもの

【映画】
LUCK-KEY/ラッキー
暗数殺人 *再見
8番目の男
弁護人 *再見
無垢なる証人
ミュンヘン:戦火燃ゆる前に
幼い依頼人
ディヴァイン・フューリー

【ドラマ】
怪物

こんなに韓国映画ばかり続けて観ているのは珍しい。このほかにも実は『エクストリーム・ジョブ』なんかもご飯のお供にしょっちゅうつけているけどCMかというぐらい去年からよく観ているのでとりあえず外した。『暗数殺人』は公開時以来初めて久しぶりに観たけどやはりとても好きな映画だった。宣伝では頭脳明晰な連続殺人犯カンテオ(チュジフン)が目立っていたが実はこの映画の主役は成り行き的に捜査を担当することになるキム刑事(キムユンソク)。正義感や義憤に押しつぶされて暴走してしまうこともなく声を荒げる場面もおそらく1回もなくカンテオと正面切って対峙したりまともに取り合うこともせずひたすらコツコツと、あるかなきかの細かな手がかりをあきらめず地道な捜査を続けていく。だからといってパズルか何かのように事件を解き明かしたいのではなく、キム刑事の脳裡にあるのはこの犯罪者に殺害されて今も見つからずにいる、名前も人生もあったあの人、この人なのだ。

『無垢なる証人』雇い主の自殺だと主張するも殺人の疑いで起訴された家政婦(ヨムヘラン)、唯一の目撃者で証人となる自閉症の中学生(キムヒャンギ)、人権派だったが家庭の事情で稼げる大手事務所に転職したことが窺われる家政婦側の弁護士(チョンウソン)。弁護士を演じたチョンウソンが穏やかで誠実そうで安心感に満ちた空気を醸し出していてとてもよいのだが、賞を受賞した元の脚本では弁護士はゲイの設定だったのを映画化で変更したらしい。そう聞くと序盤の父親との会話とか担当検事とのかかわりや本人の演じ方もいろいろと腑に落ちる気がして、まあ事実はわからないけどけっこう直前でラストだけ変えた可能性もなくはないのではと思える。本来の設定の方が話も生きたのではないか、自分の偏見と無理解で一度は証人を貶めてしまう本人も実は韓国ではまだ(もちろん日本も同様だが)周囲から偏見と無理解を向けられるマイノリティだったという構造に意図があったのではないか。ただこの作品は自閉症の描き方では本国で批判も受けている(天才設定はステレオタイプなご都合主義、真実しか言えないというのも偏見にすぎないなど)。

ミュンヘン:戦火燃ゆる前に』はNetflixに入ったばかりの作品でたまたま観た。戦争前夜の落ち着きのない張り詰めた空気、抗う者は口を塞がれ雪崩を打って破滅に向かうのを見ているしかない状況が心底恐ろしかったがいかんせんこの時代のイギリス、ドイツの歴史を知らなすぎる。知らないながら美化されている描写もありそうだなと感じた。政府中枢で働いているため国際情勢に通じてはいても末端の職員に過ぎない青年でも最終的にあのような決意をするのかと思うと戦争とはどこまでも醜い。主演のジョージ・マッケイ(マカイ)はいい俳優だけどそろそろ現代の作品にもオファーしてほしい。出演作の9割がた歴史物伝記物ではないだろうか。