12月と1月の読書


モーリス (光文社古典新訳文庫)モーリス (光文社古典新訳文庫)
読了日:12月08日 著者:E・M・フォースター

 

アキレウスの歌アキレウスの歌
読了日:01月21日 著者:マデリン ミラー,Madeline Miller

 

12月と1月はそれぞれ1冊ずつ。

E.M.フォースター『モーリス』初読(映画も未見)。映画が公開された頃の日本での受容のされ方が雑誌スクリーンがやっていた(今も?)"英国"俳優ランキング的なものと同種の、裏返しのレイシズムあるいはホモフォビア的なものだったのもあって遠ざけたきりだったのだが読んでよかった、おもしろかった。とはいえやはり階級の上層にいる者のある種の自己憐憫アンチヒーロー的夢想にすぎないと言われれば反論の余地はないと思う、同性愛が犯罪だった時期の当事者であったとしても。という点に留意しつつも手放しでよかったのはハッピーエンドであること。1960年に書かれた巻末の著者はしがきでハッピーエンドであることは必須でそうでなければ書き始めなかったとある。
この著者はしがきが非常におもしろく、『モーリス』の執筆は1913年に始めてその後も手を入れ続けていること、友人たちに読んでもらい論評を得ていること、何の影響を受けたか、モデルがいること、同性愛が違法でなくなるまで出版はできないだろうことなどが綴られている。モーリスと最後に恋に落ちる労働者階級のアレックにはモデルはおらず人生を想像することもできなかったというのは著者自身が特権階級だったことによる当然の限界でもあり、階級を超えた愛みたいなものにも傲慢さがどうしても拭えない所以でもあると思う。イングランドで同性愛が違法でなくなったのは1967年、『モーリス』刊行はフォースターの死去翌年の1971年だ。しかし出版をひとまず念頭に置いていなかったからこそ明示的な同性愛表象が実現しているのかもしれない。これが出せる世になるまで待とうとしたことにはクリエイターとしての矜持のほかにもちろん保身(非難の意味ではない)の部分もあっただろうし、何重にもシステムはクソという話である。

アキレウスの歌』は原書で読んではいた(感想はこちらに)のだが念のためというか、自分の英語読解力に全幅の信頼が置けるわけではないので、図書館で借りて読んでみた。よい翻訳なのでぜひ。

 

イスラエルが南に避難しろといっておいて避難民が押し寄せているガザ南部140万人に対して大規模爆撃を開始したとのニュースが今日入ってきた。これほどまでの凶行をこれほどまでに止められないのは、欧米列強(という言葉を歴史の教科書から今の現実に引っ張り出してきてもよいだろう)の利害がイスラエルと一致しているからであり、そして何よりも人種差別である。帝国主義植民地主義