1月の読書
1/1 マーク・トウェイン/柴田元幸『ハックルベリー・フィンの冒けん』
1/3 クレア・キーガン/鴻巣友季子『ほんのささやかなこと』
1/8 トム・スタンデージ/服部桂『ヴィクトリア朝時代のインターネット』
1/11 ジェスミン・ウォード/石川由美子『降りていこう』
1/22 ジェイムス・ボールドウィン/斎藤数衛『山にのぼりて告げよ』
1/23 柴田元幸翻訳叢書『アメリカン・マスターピース 戦後篇』
1/26 タナハシ・コーツ/池田年穂『世界と僕のあいだに』
1/31 リチャード・パワーズ/柴田元幸『舞踏会へ向かう三人の農夫 上』
昨年後半からまったくと言っていいほど気が散って本が読めなくなっていたのだが、よく言われるようにまさに読書は筋トレと似ているのでとりあえず始めるという最大のハードルを越えれば軌道に乗りやすいのだろう。仕事のストレスが減ったからかな、とも思ったが1月前半は未知の作業も含んで忙しくコントロールしにくい状態だった。SNSからどんどん遠のいているのがなんだかんだいちばん大きな要因かもしれない。あまりにもひどいニュースが日々蔓延する今、現実逃避の感も否めない。逃避できない人々に対する後ろめたさ。
『ハックルベリー・フィンの冒けん』は今年翻訳が刊行予定のパーシヴァル・エヴェレットのJamesの予習として未読だったので読んだ。
『ほんのささやかなこと』主人公の心情・思考の変遷を追うという点でクリスティの『春にして君を離れ』を思い出した。これはネタバレにはならない、まったく違う話。寒さ、あたたかさ、不安、迷い、名状しがたい違和感などが手に取るように伝わる。訳文もすばらしいと思ったので日本翻訳大賞で投票した。
『ヴィクトリア朝時代のインターネット』電信技術の発明・発展と普及の歴史なのだが実在のエピソードは小説のよう。150年前〜第二次世界大戦後まもないぐらいの時期に書かれた小説を読む人は生活や社会の土台を感じ取るための参考図書としてぜひ読むといいと思うし、そのぐらいの時期を舞台にした映画やドラマのあれこれがなるほどあれかと腑に落ちたりもすると思う。
『降りていこう』ジェスミン・ウォードはずっと読みたい、読むべきと思って読みたいリストにも入れていたのだが、リストしていなかった最新刊が書店でたまたま目に入って手に取りそのままレジへ、そして読了1作目となった。奴隷制時代のアメリカを生き抜く重い話なのだが、死んでなるか捕まってなるかという頑丈な意志の強さに引っぱられてすごいスピードでぐいぐい読まされる。全作を追いたい作家。
『山にのぼりてつげよ』おととし古書で買っていたのをようやく。ルーツを遡りながら次第にそれぞれの人生が紐解かれていく、希望が諦念にしぼんでいく、そして最終的にすべてが新しい始原の混沌の中に溶け込んでいく。そこから生まれるのは絶望だけでも希望だけでも自由だけでも束縛だけでもなく、すべてなのだろう。
『アメリカン・マスターピース 戦後篇』ジェームズ・ボールドウィン「サニーのブルース」を目当てに。ボールドウィンの小説はこれで3作目になり、何度も何度も折り返しながら難渋しつつ進むような語り口に強い愛着を覚えることを実感、日本の古本屋を方々漁ってだいたいの邦訳(全部めちゃくちゃ古い絶版)をいっぺんに買った。
『世界と僕のあいだに』一度挫折してそのまま放置していたのをやっと読む。アメリカ文学の重要作なのはわかるし読むべき作品という認識はまったく揺るがないが好みかというとそうでもないかも。けっこう大きな誤訳を発見してしまい(そのせいで原書をKindleで買って並行して読むことに)、ぜひ改訂版を出してほしい。
『舞踏会へ向かう三人の農夫』これもだいぶ前に序盤で挫折していたもの。その時が来た。下巻は2月に入ってすぐに読了。あらすじは説明しづらいというか説明できるフォーマットになってないというかだし、実在とフィクションが混じり合い、物理や歴史も交錯するわけのわからない話なのだが、どうにも心を捉える表現や物事の把握の仕方が随所にあり、読みながらもう絶対パワーズを離さないみたいな気持ちに。まったく認識していなかったのだがこれがパワーズのデビュー。「若書き」みたいな概念はあまり信用できないものの、他に読んだ唯一のパワーズ作『オーバーストーリー』と比べると地の文でboastingというかサーカズムが鼻につく箇所がちょっとあると思う。
NYTとlithubの21世紀(まだ24年しかないけど)のブックリスト
ニューヨークタイムズ紙が7月半ばに21世紀の100冊を発表した。
作家、詩人、批評家など文芸に携わる503人にそれぞれ10冊を挙げてもらい集計した結果らしい。まだ24年なのに21世紀と銘打つのか、とか同一作家の複数作品が挙がっているのは単純集計ならまあしょうがないかもしれないが「21世紀の」と大きく出るなら単純に好きなもの挙げろではない基準があってしかるべきでは、とか気になる点はままある。さらにニューヨークタイムズはイスラエルのジェノサイドに肯定的でトランス差別的言説もたびたび取り上げているという偏りがある点も留意すべきだろうと思う。
これに対してlithubという文芸メディアが「ニューヨークタイムズのリストから漏れているが追加すべき21世紀の71冊」という記事を出した。
私の観測範囲でしかないので当然漏れはあるだろうが、lithubはイスラエルのジェノサイドを明確に批判しているほぼ唯一と言ってよい文芸メディアだと思う。何百人もの文芸に携わるあらゆる業種の人間に聞いたらしいのにlithubで声をかけられた人はなぜか1人もいない、失礼しちゃう、みたいな皮肉たっぷりの前説に続けてNYTのリストよりバラエティに富むように思える71冊が選ばれている。私が極端に愛するA Little LifeがNYTのリストにはなくて驚愕したがこちらには入っている。
いずれにしてもこのようなランキングリストはどうしても権威主義的になるし、となるとなおさら非白人・非シス・非ヘテロの著者・内容の比率はデフォルトでグラフでもつけるべきだろうとも思う。けれども、それでもやっぱりリストは好きというのとこれを参考に読み進めるのもまあありかな・・ということですでに邦訳をピックアップした方が何人もいらっしゃるのでそれらを参考にいちおう全部確認し未訳を含めて加筆した両方のリストを参考まで載せておきます。邦訳作品数はNYTで71、lithubで33で、思ったより多いなと感じた。調べながら新潮クレストと白水社エクスリブリス率が高かったような気がする。訳者、出版社、出版年、版元リンクまで手が回らず無念。
ニューヨークタイムズの100冊リスト:
- エレーナ・フェッランテ『リラとわたし』
- Isabel Wilkerson, The Warmth of Other Suns
- ヒラリー・マンテル『ウルフ・ホール』
- エドワード・P・ジョーンズ『地図になかった世界』
- ジョナサン フランゼン『コレクションズ』
- ロベルト・ボラーニョ『2666』
- コルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』
- W・G・ゼーバルト『アウステルリッツ』
- カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
- マリリン・ロビンソン『ギレアド』
- ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』
- ジョーン・ディディオン『悲しみにある者』
- コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』
- レイチェル・カスク『愛し続けられない人々』
- ミン・ジン・リー『パチンコ』
- マイケル・シェイボン『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』
- Paul Beatty, The Sellout
- ジョージ・ソーンダーズ『リンカーンとさまよえる霊魂たち』
- Patrick Radden Keefe, Say Nothing: A True Story of Murder and Memory in Northern Ireland
- Percival Everett, Erasure
- マシュー・デスモンド『家を失う人々 最貧困地区で生活した社会学者、1年余の記録』
- キャサリン・ブー『いつまでも美しく: インド・ムンバイの スラムに生きる人びと』
- アリス・マンロー『イラクサ』
- リチャード・パワーズ『オーバーストーリー』
- Adrian Nicole LeBlanc, Random Family
- イアン・マキューアン『贖罪』
- チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカーナ』
- ディヴィッド・ミッチェル『クラウド・アトラス』
- Helen DeWitt, The Last Samurai
- ジェスミン・ウォード『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』
- ゼイディー・スミス『ホワイト・ティース』
- Alan Hollinghurst, The Line of Beauty
- ジェスミン・ウォード『骨を引き上げろ』
- Claudia Rankine, Citizen
- アリソン・ベクダル『ファン・ホーム ~ある家族の悲喜劇』
- タナハシ・コーツ『世界と僕のあいだに』
- Annie Ernaux, The Years
- ロベルト・ボラーニョ『野生の探偵たち』
- ジェニファー・イーガン『ならずものがやってくる』
- ヘレン・マクドナルド『オはオオタカのオ』
- Claire Keegan, Small Things Like These
- マーロン・ジェイムズ『七つの殺人に関する簡潔な記録』
- トニー・ジャット『ヨーロッパ戦後史』
- N・K・ジェミシン『第五の季節』
- Maggie Nelson, The Argonauts
- ドナ・タート『ゴールドフィンチ』
- トニ・モリスン『マーシイ』
- マルジャン・サトラピ『ペルセポリス』
- ハン・ガン『菜食主義者』
- エルナン・ディアズ『トラスト―絆/わが人生/追憶の記/未来』
- ケイト・アトキンソン『ライフ・アフター・ライフ』
- Denis Johnson, Train Dreams
- アリス・マンロー『ジュリエット』
- ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』
- Rachel Kushner, The Flamenthrowers
- ローレンス・ライト『倒壊する巨塔』
- バーバラ・エーレンライク『ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実』
- Hua Hsu, Stay True
- ジェフリー・ユージェニデス『ミドルセックス』
- キエセ・レイモン『ヘヴィ あるアメリカ人の回想録』
- Barbara Kingsolver, Demon Copperhead
- ベン・ラーナー『10:04』
- Mary Gaitskill, Veronica
- Rebecca Makkai, The Great Believers
- フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ』
- Justin Torres, We the Animals
- アンドリュー・ソロモン『「ちがい」がある子とその親の物語』
- シーグリッド・ヌーネス『友だち』
- Michelle Alexander, The New Jim Crow
- Edward P. Jones, All Aunt Hagar's Children
- トーヴェ・ディトレウセン『結婚/毒――コペンハーゲン三部作』
- スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『セカンドハンドの時代』
- Roberto Caro, The Passage of Power
- エリザベス・ストラウト『オリーヴ・キタリッジの生活』
- モーシン・ハミッド『西への出口』
- ガブリエル・ゼヴィン『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』
- タヤリ・ジョーンズ『結婚という物語』
- Jon Fosse, Septology
- ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』
- エレナ・フェッランテ『失われた女の子』
- John Jeremiah Sullivan, Pulphead
- フェルナンダ・メルチョール『ハリケーンの季節』
- ベンハミン・ラバトゥッツ「私たちが世界を理解しなくなったとき」(『恐るべき緑』所収)
- シッダールタ・ムカジー『病の皇帝「がん」に挑む ― 人類4000年の苦闘』
- ジョージ・ソーンダーズ『パストラリア』
- David W. Blight, Frederick Douglass
- Torrey Peters, Detransition, Baby
- Lydia Davis, The Collected Stories of Lydia Davis
- ヒシャー・ムタール『帰還: 父と息子を分かつ国』
- ヴィエト・タン・グエン『シンパサイザー』
- フィリップ・ロス『ヒューマン・ステイン』
- Elena Ferrante, The Days of Abandonment
- エミリー・セントジョン マンデル『ステーション・イレブン』
- ゼイディ・スミス『美について』
- ヒラリー・マンテル『罪人を召し出せ』
- Saidiya Hartman, Wayward Lives, Beautiful Experiments
- Jesmyn Ward, Men We Reaped
- アン・パチェット『ベル・カント』
- アリ・スミス『両方になる』
- デニス・ジョンソン『煙の樹』
lithubの71冊リスト(刊行年-著者名順): (※何度数えても69冊だった)
- Emma Donoghue, Slammerkin
- テッド・チャン『あなたの人生の物語』
- ジョン・マクガハン『湖畔』
- ZZ Packer, Drinking Coffee Elsewhere
- ジョナサン・レセム『孤独の要塞』
- ジュンパ・ラヒリ『その名にちなんで』
- スザンナ・クラーク『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』
- トム・マッカーシー『もう一度』
- デヴィッド・フォスター・ウォレス『ロブスターの身』
- Curtis Sittenfeld, Prep
- 村上春樹『海辺のカフカ
- Amy Hempel, Collected Stories
- Deborah Eisenberg, Twilight of the Superheroes
- ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』
- ロベルト・サビアーノ『死都ゴモラ―世界の裏側を支配する暗黒帝国』
- タナ・フレンチ『悪意の森』
- スティーヴン・ミルハウザー「危険な笑い」 (『十三の物語』所収)
- Rick Perlstein, Nixonland
- Maggie Nelson, Bluets
- チャイナ・ミエヴィル『都市と都市』
- Jenny Erpenbeck, Visitation
- C. D. Wright, One With Others
- ティモシー・スナイダー『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』
- テア・オブレヒト『タイガーズ・ワイフ』
- Natalie Diaz, When My Brother Was an Aztec
- ギリアン・フリン『ゴーン・ガール』
- カール・オーヴェ・クナウスゴール『わが闘争 父の死』
- Louise Erdrich, The Round House
- ロビン・ウォール・キマラー『植物と叡智の守り人』
- フアン・ガブリエル・バスケス『物が落ちる音』
- アレクサンダル・ヘモン『私の人生の本』
- カレン・ラッセル『レモン畑の吸血鬼』
- Miriam Toews, All My Puny Sorrows
- ジェフ・ヴァンダミア『全滅領域』
- Kerry Howley, Thrown
- Merritt Tierce, Love Me Back
- Yuri Herrera, Signs Preceding the End of the World
- Fiston Mwanza Mujila, Tram 83
- ウィリアム・フィネガン『バーバリアンデイズ』
- Margo Jefferson, Negroland
- Hannya Yanagihara, A Little Life
- Mike McCormack, Solar Bones
- Danielle Dutton, Margaret the First
- Garth Greenwell, What Belongs to You
- Elif Batuman, The Idiot
- Ottessa Moshfegh, Homesick for Another World
- カル・マリア・マチャド『彼女の体とその他の断片』
- Layli Long Sodier, WHEREAS
- Adania Shibli, Minor Detail
- adrienne maree brown, emergent strategy
- オルガ・トカルチュク『逃亡派』
- サリー・ルーニー『ノーマル・ピープル』
- Richard Wagamese, Indian Horse
- リン・マー『断絶』
- アフマド・サアダーウィー『バグダードのフランケンシュタイン』
- トミー・オレンジ『ゼアゼア』
- Deborah Levy, The Man Who Saw Everything
- Jake Skeets, Eyes Bottle Dark with a Mouthful of Flowers
- Susan Choi, Trust Exercise
- アンナ・バーンズ『ミルクマン』
- Sarah M. Broom, The Yellow House
- Agustin Fernandez Mallo, Nocilla Dream
- ロバート・マクファーレン『アンダーランド:記憶、隠喩、禁忌の地下空間』
- エリック・ヴュイヤール『その日の予定』
- Jessamine Chan, The School for Good Mothers
- Sarah Schulman, Let the Record Show: A Political History of ACT Up New York 1987-1993
- Patricia Lockwood, No One is Talking About This
- Harald Voetmann, Sublunar
- Paul Murray, The Bee Sting
7月の読書
読んだ本の数:2
読んだページ数:965
百年の孤独 (新潮文庫 カ 24-2)
読了日:07月12日 著者:ガブリエル・ガルシア=マルケス
狂人の二つの体制 1975-1982
読了日:07月21日 著者:G・ドゥルーズ
うちにあったはずの古い単行本が見つからず、未読でもあったので祭りに乗って『百年の孤独』を。おもしろくないわけではなかったが、やはり私は代々受け継がれる逃れることのできない血縁の運命みたいな話に興味がなさすぎる。家系図が欲しいとかこんがらがるという意見をよく見かけたが、確かに名前のバリエーションは少なく同名の人ばかりではあるものの時代と人柄がそれぞれ違うし、たとえ混同したりあれこれ誰だっけとなったまま読み進めてしまっても後で困るということはないのではないかと思う。ブエンディア家の人たちと一緒に、忘れてたけどそういやあんたいたね…!とかなるのもおもしろいのでは。
『狂人の二つの体制』はTwitterで見かけてほんの出来心で図書館で借りたのだが、「精神分裂」だとか「狂気」だとか「両性具有で心に女を持っておりその女にそそのかされて女を殺す女嫌いの小説」の話だとか、当時まだ理解が不十分な知識と社会規範の範疇で語られるものをどう読めばよいのかわからずほとんど飛ばした。哲学プロパーで学んだことはなく、独学で読んできたわけでもなく、今後もその必要はない身としては得るものが少ないというか少なくとも今回借りた本は私にははずれだしやっぱり哲学用語の基礎がないとそういう引っかかり以外の地の文(?)からして難しい。哲学なんかぜんぜん知らんと思っているようなわれわれのものの見方にも少なからずドゥルーズの影響を受けているものはあるはずで、そういう意味で読んでおきたいという気持ちはずっとあるのだが、いきなり最初の1~2冊から理解できる感覚を求めるのは土台無理という話。エッセンスをつまみ食いすることができるのもざっくりとでも全体的な理解があってのことだし、わかりたいならわからんと思いながら根気よくある程度の量を読んでいく必要があるし、私にそういう根気はたぶんない。
7月は百年の孤独を読み切るのに手間取ったあとは職場でちょっと懸念事項やストレスが重なったりとにかく酷暑だったりで読む気力が失われていた。小説は少し置いて別のものを読もうかなあという気分になっている。ナショナリズムと人種差別の気運を盛り上げる排除的・帝国主義的一大有害イベント、オリンピック反対
6月の読書
読んだ本の数:5
読んだページ数:1587
アルテミオ・クルスの死 (岩波文庫 赤 794-2)
読了日:06月07日 著者:フエンテス
悪魔の涎/追い求める男: 他八篇 (岩波文庫 赤 790-1)
読了日:06月13日 著者:コルタサル
ホメーロスの オデュッセイア物語(上) (岩波少年文庫)
読了日:06月18日 著者:バーバラ・レオニ・ピカード
ホメーロスの オデュッセイア物語(下) (岩波少年文庫)
読了日:06月20日 著者:バーバラ・レオニ・ピカード
ラテンアメリカの文学 ラテンアメリカ五人集 (集英社文庫)
読了日:06月30日 著者:マリオ・バルガス=リョサ,ホセ・エミリオ・パチェーコ,カルロス・フエンテス,ミゲル・アンヘル・アストゥリアス,オクタビオ・パス
『百年の孤独』文庫化のニュースの影響かもしれないが、長らく積んでいた南米の作家に着手。五人集のバルガス=リョサ「子犬たち」とパチェーコ「砂漠の戦争」がとてもよかった。フエンテスはヘテロカップルの関係性の描写が突出して巧みそして妙におしゃれに感じるがあまり乗れない。邦訳はまだほかにもかなりあるようで、ロマンスのない話があったら読んでみたい気はする。オデュッセイアは今年中にユリシーズを読みたいと思っておりその準備がてら読んだ。子供向けにわかりやすく話の順番も入れ替えた散文の再話なので一瞬で読め、とてもおもしろかった。物語の型がすでに完成しているのを感じる。古代ギリシャでは裏切り者や不誠実な者にはほとんどの場合むごい死が妥当のようで、これほど賢く思いやりのある者なら今の感覚だと殺しはしなさそうなところで皆殺しにしたりする。それとも当時でも現実には殺害や復讐はままならず、こうした物語を聞く聴衆にとってもフィクションの中でだけ果たされるカタルシスだったのだろうか。
5月の読書
読んだ本の数:4
読んだページ数:1697
ハリケーンの季節
読了日:05月02日 著者:フェルナンダ・メルチョール
アメリカの友人 (河出文庫 ハ 2-15)
読了日:05月04日 著者:パトリシア・ハイスミス
リプリーをまねた少年 (河出文庫 ハ 2-16)
読了日:05月08日 著者:パトリシア・ハイスミス
死者と踊るリプリー (河出文庫 ハ 2-17)
読了日:05月14日 著者:パトリシア・ハイスミス
リプリーのシリーズを全部読み終わってしまい、さびしくて感想が書けなかった。というわけではないが、どうもここのところ感想が書けなくなっている。それどころではない暴力、殺戮が世界中のそこかしこで続きそれが日々目に耳に入ってくるのに、という焦燥感がやはりあり、自分は主に米英のエンタメを楽しんできたのだがそれらの国が現在イスラエルのジェノサイドを容認・支持しているのをいわば公然と見せつけられ、虚しいやら、読む視点も変化・流動している。もう6月も終わるのでとりあえず記録として。
4月の読書
読んだ本の数:6
読んだページ数:1660
恐るべき緑 (エクス・リブリス)
読了日:04月09日 著者:ベンハミン・ラバトゥッツ
太陽がいっぱい (河出文庫)
読了日:04月13日 著者:パトリシア・ハイスミス
吹きさらう風 (創造するラテンアメリカ)
読了日:04月17日 著者:セルバ・アルマダ
贋作 (河出文庫 ハ 2-14)
読了日:04月22日 著者:パトリシア・ハイスミス
ある一生 (Shinchosha CREST BOOKS)
読了日:04月23日 著者:ローベルト・ゼーターラー
帰れない山 (Shinchosha CREST BOOKS)
読了日:04月26日 著者:パオロ・コニェッティ
4月読んだのは小説ばかりだった。3月にKindleの未読を整理したが、いくら買うのが趣味でもやはりなるべく読んでいきたい気持ちになっている。kpopを追っている頃はほぼ住んでいたSNSを最近はどんどん見なくなって時間ができたこともあるのか、本を読む感覚も取り戻してスラスラ読めるようになってきた。今月読んだ作品はみななかなかよい読書だったがどれもわりと感想を書きにくい。
『恐るべき緑』は刊行予定を見たときにタイトルに惹かれて、発売を楽しみにしていたもの。いわゆる天才と言われるような実在の科学者たちの引き込まれる逸話を語りながらも主題はかれらひとりひとりが研究・探求の途上や末に独り目撃し見つめていた固有の宇宙についてという感じの連作的な小説。ひとつひとつの逸話の語り終え方が幾重にも意味をはらんでおりものすごく好みだった。タイトルがよかったのかBlueskyのタイムラインでもちょくちょく見かけたしそれなりに売れているのではないだろうか。他の作品も翻訳されるといいのだが。
『ある一生』と『帰れない山』はどちらも気候の厳しい山間部での暮らしがベースになっている小説でどちらも「孤独」を描いており、「孤独」をどうとらえているかによって受ける印象は正反対になるのかもしれない。どちらかというと(どちらかといわなくてもかもだけど)「孤独」に親近感と居心地のよさをいだく私には好ましさが勝るのだけど、作中でその「孤独」の人の周囲の人間の反応や語りの雰囲気からは「孤独」はあまりよいものとはとらえられていないのがちょっと不満というかさびしい。世の中にはほがらかな「孤独」の表象がもっと必要だ。
Netflixでアンドリュー・スコットがリプリーを演じるドラマ『リプリー』が配信されてすぐ観たところおもしろかったので、未読だった原作を読んだ上でもうほぼ覚えていない『太陽がいっぱい』と未見のマット・デーモンの『リプリー』も観てみることにして読んだらびっくりするほどおもしろかった。孤独に親しみとほんの少しの寂しさを抱くクィア文学の金字塔(のひとつ)と言っていいと思う(と言うほどクィア文学を読んではいない)。原作を読み映画化2作を観てみると改めてNetflixリプリーはほんとうに脚本がよく練られていると思う。原作のトム・リプリーのセクシュアリティは明示されることはなく、狭義の異性愛者ではないかもしれないとしか言えない感じで解釈の幅があるし、経済的・社会的な欲求も想像が追いついておらずふわふわと現実味に欠けていて具体的な野心や大目標があるわけではない。ドラマはそういう曖昧さをとことん丹念に描いていく。映画2作がラストを破滅にしたことは正直原作へのリスペクトという点ではいちばんやってはいけないことだったのではないかと思えるが(『リプリー』の方は加えてクィアに悲劇をもたらすのでさらに悪い)、ドラマでようやくリプリーがリプリーとして立ち上がっている。原作の方はリプリーが登場する作品が私も知らなかったのだが実は太陽がいっぱいの後に4作ある。つまりリプリーは太陽がいっぱいでは映画と違ってサバイブするのだ。
『贋作』は『太陽がいっぱい』に続くリプリー第2作。こちらはクィア味は消えているものの、基本的には慎重で綿密なのにときに思いつきで迂闊なことをやり進退窮まるリプリーらしさを楽しめる。いわゆるミステリー小説ではなく謎解きもトリックもないが、リプリーの性格ゆえに先が読めない展開は常にスリリングで、ハイスミスはほんとうに語りがうまいと思う。5月は残る3作を読む予定。
さっき3月の記録をまとめた後、イスラエルの財務大臣が「ガザの完全な殲滅」(total annihilation) を呼びかけたとの報道を見た。3万2千人を殺害してもまだ足りない。イスラエルに対してなぜこれほどまでに何もできないのだろう。
3月の読書
読んだ本の数:12
読んだページ数:2910
Ending the Pursuit: Asexuality, Aromanticism and Agender Identity (English Edition)
読了日:03月05日 著者:Michael Paramo
ミヒャエル・コールハース チリの地震 他一篇 (岩波文庫 赤416-6)
読了日:03月06日 著者:クライスト
書くことについて ~ON WRITING~ (小学館文庫)
読了日:03月06日 著者:スティーヴン・キング
食べものから学ぶ世界史 人も自然も壊さない経済とは? (岩波ジュニア新書)
読了日:03月07日 著者:平賀 緑
エレベーター
読了日:03月07日 著者:ジェイソン・レナルズ
女ことばと日本語 (岩波新書)
読了日:03月08日 著者:中村 桃子
LGBTを読みとく ──クィア・スタディーズ入門 (ちくま新書)
読了日:03月09日 著者:森山至貴
障害者差別を問いなおす (ちくま新書)
読了日:03月10日 著者:荒井裕樹
相模原事件とヘイトクライム (岩波ブックレット)
読了日:03月10日 著者:保坂 展人
アンチレイシストであるためには
読了日:03月16日 著者:イブラム・X・ケンディ
検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? (岩波ブックレット)
読了日:03月20日 著者:小野寺 拓也,田野 大輔
兵役拒否の問い 韓国における反戦平和運動の経験と思索
読了日:03月30日 著者:イ ヨンソク
3月は突然Kindleを消化したくなり、未読でソートをかけて古い順から見切りをつけるものはつけ、どんどん読み、100冊近かった未読を12冊まで減らした。買うのが趣味とはいえ積みすぎると今の自分の関心とは外れたもの(おそらく将来的にも戻らないであろうもの)が出てきてしまうのでたいがいにしなければと思った。しかしここで挙げているものは過去の自分、いい本買ってたなと思うものばかりで、思い立って片っ端から読んでみてよかった。
Ending the Pursuit: Asexuality, Aromanticism and Agender Identityについてはこちらに感想を書いた。
『食べ物から学ぶ世界史』は小中学生から読める本だが資本主義や植民地主義に対する批判的視野に基づいて書かれており、子供の頃にたとえその時にはピンとこなくても読んでおくといずれどこかで思い出したり礎となったりするだろうと思える重要な本だと思う。
『女ことばと日本語』は性的役割語がどんな文脈でいかにして作られてきたかを紐解く本で、女性差別の全部乗せみたいな話で心の底からグロテスクで具合悪くなりそうである。女性を差別し劣位に置き、蔑み、抑圧のために持ち上げ、役割を与え、がんじがらめにする。イ・ヨンスク『「国語」という思想』とともに一読をおすすめする。ただこの紙幅では足りないのか推定が少し強引ではと感じられるところは多い。でもそれを差し引いても一度は目を通すとよいと思うし、翻訳者はまじで読んでほしい(なんとか役割語を回避しようとする苦心の跡がうかがえる訳文に出会うことは多くなってきていると思う)。
『障害者差別を問いなおす』も必読の新書。差別に反対する者たちの言う「障害者も同じ人間」とは本来「だから他の誰にも認められている権利や機会を同じように認めろ」という主張のはずなのに「だから権利の主張だけでなく我慢や自制も必要」という抑圧に働きうる。それが相模原の事件の時には「だから無闇に殺すな」まで後退させる恐れがあったというくだりに呻く。女性差別や性的マイノリティ差別を語る言葉は掘り下げられ語彙が増えていったのに対して障害者差別を掘り下げ腑分けし名付け語る語彙が依然増えないことの意味を噛みしめる必要がある。
『アンチレイシストであるためには』著者が内面化していたレイシズムやその他の偏見を掘り起こしながら、それに応じたレイシズムの歴史と研究の諸相を紐解きつつ、タイトル通りアンチレイシストであるためにどう考えてどう行動すべきかを説く自叙伝という趣きの本だった。内容がぎっちり詰まっていて読み通すのにはかなり骨が折れるけど、よい本だと思う。問題は人ではなくシステム(本書ではポリシーという言葉が使われている。政策のような意味に限定されない基本原理、みたいな意味合いと解釈)。原著2019年、邦訳2021年。
『兵役拒否の問い 韓国における反戦平和運動の経験と思索』kpopや韓国映画ドラマを見ているだけでは兵役とはあまりにも当たり前に受け入れられている通過儀礼、せいぜい「必要悪」としか感じられないが、そんな社会で良心的兵役拒否を貫き犯罪者として刑務所へ送られる人々がいたことを知る(もちろん自分が無知だっただけである)。日本は朝鮮半島の歴史に対して責任があること、誰も戦争の準備を強制させられることがあってはならないことを考える。この本の注で初めて知ったのだが、中国東北部の朝鮮族の存在も、もちろん国境地帯なので古くから移民はいたものの今現在の直接的なルーツは1910年の日本の侵略で中国側に逃げ込んだ人たちだった。韓国映画で差別的に描かれる延辺の朝鮮族の人たちも日本の植民地支配の犠牲者なのだ。
ハマスとの停戦合意にかかわらずラファに侵攻するとネタニヤフが言っているらしい。事ここに至っても「欧米列強」から目立った動きはない。アメリカでは大学生らの穏健なプロテストを逮捕しまくっている。権力を憎む毎日