【読書】ガブリエル・ガルシア=マルケス『エレンディラ』鼓直・木村榮一訳 ちくま文庫 1988

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『大学教授のように本を読む方法』の中で取り上げられていた「大きな翼のある、ひどく年取った男」を読んでみたくて購入。ほんとうに久しぶりに読んだ小説だったがおもしろかった。私は映画でも南米、スペイン語圏の作品に比較的好きなものが多い。何が好きかというと日常に非現実が接続するそのやり方で、いわゆるマジック・リアリズムというやつなのだろうが、「日常に非現実が」と対立するもののように書いたけれどおそらく対立してはおらず、どちらが現実かと問うようなものでもなさそうで、非現実が存在する現実が現実とでもいうか、ただそこや隣や目の前に存在する非現実、怪異の描き方がなんともいえずよい。心地よい。私に優しい。「ふつう」でないこと・ものが確かに在りかつなんの説明もされないということが私にとってはまず素敵なことなのかもしれない。それが醜くても、不快であっても。表題作はタイトルが端折られている(そのことはあとがきで断られている)ので正式な方を書いておこう。「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」。エレンディラの疾走はしばらく心に残りそう。