【読書】トーマス・C・フォスター『大学教授のように本を読む方法』矢倉尚子訳 白水社 2019

https://www.hakusuisha.co.jp/book/b479970.html
『批評の教室』に続いて文学批評の本。テーマは多岐にわたるが間テクスト性、象徴について重点が置かれているかと思う。題材となっている作品を読んでいれば腑に落ちてさらに理解が深まると思うけれども残念なことにほとんど読んだものがなく、テーマによっては飛ばしながら読んだ。これから小説を読んだら読み返してみるみたいな使い方が私にはよさそうだ。巻末の読書リストが本書を読むためのいわば課題書みたいなものにもなっている。
なぜ批評の本を続けて読んだかというと最近どうも小説(フィクション)が楽しくうまく読めなくなっており、読み方のヒントが得られればと思ったから。なぜそうなってしまったのか思いつくだけで3つ理由がある。フィクションを楽しむには現実がそこそこ体裁を保っている必要があるとはよく聞くが第二次安倍政権以降の日本はまさにそれを実感する日々だということ。私自身の社会構造への理解度が多少上がったことでそういった点について無自覚な記述に出くわすととたんにやる気を失うようになったこと。あるとき突然ヘテロ性愛伴侶規範を当然の前提とした話を摂取するのはもううんざりだ、やめようという思いが強く意識にのぼって読めるものが極端に減ったこと。だけど研究対象として集中的に絵画を観ていたある程度の年月を経て、好きでも何でもないまたはいやな主題や描き方の作品でもある意味好きな作品と同様に「読む」ことができるので、小説についても同じことができるはずなのだ。ただそれには絵画の読み方を身につけたときと同じように小説と批評理論と批評とを相当量読む必要がある。絵画と違って小説は1作品を消化するのに何倍も時間がかかるしそこまで読書にエネルギーを注げるかわからないが、ぼちぼちいろんな読み方を試してみたいと思っている。