10月の読書

読んだ本の数:4
読んだページ数:1467

シークレット・ヒストリー〈上〉 (扶桑社ミステリー)シークレット・ヒストリー〈上〉 (扶桑社ミステリー)
読了日:10月15日 著者:ドナ タート
シークレット・ヒストリー〈下〉 (扶桑社ミステリー)シークレット・ヒストリー〈下〉 (扶桑社ミステリー)
読了日:10月16日 著者:ドナ タート
書記バートルビー/漂流船 (光文社古典新訳文庫)書記バートルビー/漂流船 (光文社古典新訳文庫)
読了日:10月21日 著者:メルヴィル
ジョヴァンニの部屋 (白水Uブックス (57))ジョヴァンニの部屋 (白水Uブックス (57))
読了日:10月24日 著者:ジェームズ・ボールドウィン




『シークレット・ヒストリー』なんというか、刺さる年齢は中高生かなと思う、記憶の中の15の心が騒がしく掻き立てられた。ここではないどこか、こちらではないあちら、筋金入りの富裕層との間の到底越えることのできない壁、その向こう側への憧憬、渇望がリアル。なのだが全般的に食い足りない。衒学的なサークルという設定だけどアカデミックな会話や議論は多くなく、キャラクターの踏み込みも全員もの足りなくて900ページ読んでも区別がつきにくかった。クィア界隈で複数からこのタイトルを見かけたので読んでみたのだが、確かにクィアなキャラクターがおそらく複数いるものの1人を除けばおそらくとしか言いようがなくまたその1人もクィアネス由来の悲劇プロットをあてられるなどしており、1992年という刊行年の制約なのかなと思う。クィアを期待して読むと肩透かしかと。飽きずに読めたけど好きとか読んでよかったとかではない。読後感のいい話でもなく、食い足りなさもあいまって気分が持ち直すのに少し時間がかかった。いちばんの失望点は衒学的設定がたいして衒学的ではなかったところかな。アカデミックな空気を醸し出しきれておらず、次第に大学生活の中での若者たちのありがちないざこざになってしまう。

『書記バートルビー』はいろんなところで引用や言及を見すぎるので読んでおこうと思ったものなのだがなるほど読みがいがある物語。生の拒絶と言おうか。ネットで検索すると柴田元幸訳の全文がなぜか放送大学のPDF直リンクで読める。語り口がまったく違うのでお好みで。
書写人バートルビー ウォール街の物語 柴田元幸
https://info.ouj.ac.jp/~gaikokugo/meisaku07/eBook/bartleby_h.pdf

『ジョヴァンニの部屋』なんともしんどかった。古いのでよけいに、社会によりスティグマ化されたゲイ/バイセクシュアリティに悩み痛めつけられ苦しみ抜く話なので。そしてミソジニーがきつい。同性を性/愛の対象とするがそれは社会的に蔑まれ憎まれ承認されないことであるというジレンマ、相手が/自分が女でありさえすれば、という絶望がひっくり返ったものという側面もあるのだろうけど。
しかしジェームズ・ボールドウィンの邦訳状況は惨憺たる有様でほとんどすべて絶版なのではないだろうか。本人の著作ではないが『ジェイムズ・ボールドウィンアメリカ』というボールドウィンの著作・発言を跡づけつつ論じるアメリカ論的な2020年の著作が9月に翻訳されたばかりで、読みたいと思っているものの価格にやや怯む。

www.hakusuisha.co.jp

イスラエルパレスチナにやってきたこと、やっていることはジェノサイドだ。即時停止を