3月の読書

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「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし
読了日:03月01日 著者:一橋大学社会学部加藤圭木ゼミナール
ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)
読了日:03月05日 著者:ウルフ
異常【アノマリー】異常【アノマリー】
読了日:03月23日 著者:エルヴェ ル テリエ
哀惜 (ハヤカワ・ミステリ文庫)哀惜 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
読了日:03月25日 著者:アン クリーヴス
警部ヴィスティング カタリーナ・コード (小学館文庫)警部ヴィスティング カタリーナ・コード (小学館文庫)
読了日:03月27日 著者:ヨルン・リーエル ホルスト
セルリアンブルー 海が見える家 上 (マグノリアブックス)セルリアンブルー 海が見える家 上 (マグノリアブックス)
読了日:03月28日 著者:T.J.クルーン
セルリアンブルー 海が見える家 下 (マグノリアブックス)セルリアンブルー 海が見える家 下 (マグノリアブックス)
読了日:03月29日 著者:T.J.クルーン

 

何冊も続けてフィクションを読んだのは何年ぶりだろう。『ダロウェイ夫人』は映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が翻案しているのではという意見を複数見かけ、未読だったので映画を観る前に取り急ぎ読んだもの(しかし私には関連を読み取れなかった)。ヴァージニア・ウルフは短篇を1つ楽しく読んだのみで特にイメージがなかったのだが、こう自由闊達というか、才気がほとばしる感じの作家と知ることができてちょっとうれしくなった。読むのは疲れた。クィア度も高いというか、そこかしこにばらまかれていた、クィアが。

『異常 アノマリー』は昨年のベストでよくタイトルを見たので電書50%セールのときに話題だからと買っていたのをようやく読んだのだがまったく合わなかった。起きた「異常」の扱い方/への対処の仕方がぜんぜん好みではなかったのが大きいと思うが、文体(翻訳作品でどのくらい正当性があるかわからない)がばらつくところや、考えうる狙いと効果があまり噛み合っていないところなども私にはイライラポイントだった。原著2020年、登場人物は多かったがクィア度はゼロ(のはず。合わなすぎてちゃんと思い出せない)。

『哀惜』はBBCでドラマ化されており日本でもAXNミステリーで『刑事マシュー・ヴェン 哀惜のうなり』というタイトルで放送されているものの私の環境では観られない作品の原作(未練によりくどい書き方に)。遅々として進まない、細かな証言や証拠らしきものがどんどん出るのにいっこうに事件として姿を現さない苦しく地味な捜査に一歩一歩付き合っていくような展開のストーリーで、愁嘆場という意味でのドラマがなく声を荒げる人もおらず、好感度の高い作品だった。主人公マシューは物静かできれい好き、いつもぴしっとスーツを決めており、コミュニティ活動の管理者を務める夫と円満に暮らしているのがまたよい。

『警部ヴィスティング カタリーナ・コード』これはジャケ買いだったのだが、当たり。ストレスのたまらない、短時間で気楽に読めるよいミステリーだった。ヴィスティングのシリーズは原著ではもう17作とか出てるらしいのだが、これはその中のコールドケース4部作の1作目だそうで、全巻翻訳が出ている。ここ10年ぐらい特に続き物ですら翻訳が続かないものがある中でサブシリーズとはいえ既刊すべてが翻訳されたのはとても喜ばしいことだ。クィア度はゼロなのだが、性別二元論的な、セクシスト的な、ヘテロ規範的な引っかかる表現や展開は記憶にある限りはなく、その点でもストレスがない。

『セルリアンブルー 海が見える家』ずっと読みたいと思っていた作品の翻訳が出たのでようやく。魔法青少年を社会から隔離して監視する1984的な世界で、かれら(ジェンダーを問わず使っている)がかれら自身のアイデンティティを保ちながら生きられるように手助けをする保護施設の話で、昨今急激に悪化拡大しているトランス排除のバックラッシュの中で読むと胸を締めつけられるし、よりいっそうこの海が見える家が楽園に感じられる。違う、今の社会状況ではここは楽園ではないのだ。内側の仲間たちとの暮らしだけを思えば楽園に見えるけれど、残念ながら(と怒りをもって言う)外敵から身を守る要塞という意味合いの方が今読む私には重要で強く思えてしまう。いわゆる外見に恵まれたとは言えない中年男性どうしのロマンスでもある点も特筆。

フィクション(に限らないかもだが)を読むあるいは読まないに当たり自分にとって重要なポイントを改めて別項でまとめてみるかな。